『表出と表現』という言葉を取り上げたのは、私たちの『大地保育』を理解していただくためになによりも必要な言葉だからです。大地保育を代表する『どろんこ遊び』『水いたずら』などについて、不必要なものではないかと疑問に思う方もいます。「何の役にも立たない」「評価の対象にならない」「時間の無駄」と考えて切り捨ててしまいがちです。
これらの『表出』の遊びは誤解されがちです。
私たちの『大地保育』は、子どもの心の発達過程に寄り添う保育で、子ども主体の保育(=自由保育)のあり方として『表出50%と表現50%』の対等な割合を大切にしています。知育重視の園では『表現』に偏った保育が行われております。それに比較して私たちの保育の特色は『表出』も大切に考えて、「丁寧に」そして「熱心に」取り組んでいます。
『表現』とは何か。文字を教えて文章を書かせる。英語で表現させる。ブロックやレゴで家や城や乗り物など形あるものを作る。演劇を創る。体操競技を行う。舞踊を習う。種々の塾に通う、等々。以上のことから『表現』は、建設的で・道徳的で・汚れたりしない・評価される・好かれる・誉められる・認められる、等々。それは良いことでもあるので大いに奨励されて、
等々の過剰な競争ともなり、子どもたちを精神的にも肉体的にも押しつぶす結果が、「無気力」「情緒障害」「引きこもり」「いじめ」「暴力」等として現実に見受けられます。
次に、『表出』とは何か。どろんこ遊び。水いたずら。裸でマラソン。自由奔放なぬたくり等の絵。ボディーペインティング。紙やぶき遊び。名のない遊び。大きな声を出す。泣き叫ぶ。地面をのたうち回って暴れる、等々。以上のことから『表出』は、破壊的で・暴力的で・汚くて・不道徳で・評価されない・嫌われる・叱られる・等々。それは一般的には受け入れられません。しかし安全な方法での受容により
等々から『かけがえのないあなた』『世界に一人しかいない尊い我が子』『ありのままの君でいい』等々の自尊心や自己肯定感情を育てることができます。
両者ともに必要なことなのです。私たちは長い保育実践と臨床観察から理想的な保育とは、両者ともに50%と50%が理想的だと考えております。とくに乳幼児は時間の感覚がありません。過去・現在・未来が未発達なのです。今=現在しかありません。『表出』と『表現』の相殺関係もその時その時解決していかなければならないのです。高校生が受験時代を『灰色の青春』〜『大学に入ったら自由を取り戻す』というような時間的な取引を乳幼児はできません。
乳幼児は日々その時その時に『表出と表現』の精算の生活が必要なのです。